騙されるほうが悪い?!

◇オレオレ詐欺等は違うファクターも入るのでこれからの話は美術品のみを対象に話します。

私は20代の頃、7年ほどT先生に書画の鑑賞を教えていただいた。T先生は大学書道科卒業後、座禅、刀剣等も修学。東京大学、上智大学等で筆禅道を指導されていた。私は上智大学や先生のご自宅の鑑賞会で勉強させていただいた。

鑑賞会は講義でなく用意された5つの作品の中からどれが良いのか考えるものだった。構成や落款、印泥等5つの観点から冷静に対象を観ることを教わった。偽物あり。本物を印刷して印泥のみを朱にしてあるものなど様々ものがあった。

写真の2本の線はクレヨンで引いたもの。どの線が洗練度が高いだろうか。上の線はクレヨンを横に倒して引いたもので線が浅い。小学生が引く線である。下の線はクレヨンを垂直に立て回転させながら引いた。細いがキリリと締まり紙に深く食い込んで見える。

筆で書く場合、左から右への水平線と右から左への斜めの線に特に差がでる。名品には浅い線のものはあまりない。偽物は字の形を真似て線質がおろそかなものが多い。鑑賞会で先生は「騙されるほうが悪い!」とよく言われた。国宝級のものをよく観ていれば偽物はすぐわかるはず。騙されるのは鑑賞眼の未熟さを自分からさらけ出しているのと同じなのだ。

梅干しは塩と紫蘇だけで作ってるものと味付け、着色しているものとは見ただけでわかる。
犬や猫は匂いだけで食べられるか食べられないかを見分ける。本物を見分ける力は長年かけて身体で覚えるもの。鍛錬しかなく近道はなさそうだ。

2本線

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